企業法務通信

2014年12月11日 木曜日

企業における残業代請求への対策1

 
弁護士 種村  求
 
企業における残業代請求への対策1
 
 残業代を支給していない会社や固定残業代こそ支給しているものの固定残業代を上回る残業代については支給していない会社というのは非常に多くなっています。

 しかし,これらの会社において,労働者から未払残業代があるとして請求されてしまった場合,支払義務があるとされてしまうのでしょうか?

 この問題を考えるにあたって,支払義務があるとされてしまった場合の重大性をまずは認識しておく必要があります。
もし支払義務があるとされた場合には,会社は割増賃金を支払わなければならなくなってしまいます。
 たとえば,労働基準法第37条第1項は次のように規定しています。
 使用者が,第33条又は前条第1項の規定により労働時間を延長し,又は休日に労働させた場合においては,その時間又はその日の労働については,通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割5分以上5割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし,当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては,その超えた時間の労働については,通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

 また,労働基準法第37条第4項には,深夜労働の割増賃金について次のように規定しています。
 使用者が,午後10時から午前5時まで(厚生労働大臣が必要であると認める場合においては,その定める地域又は期間については午後11時から午前6時まで)の間において労働させた場合においては,その時間の労働については,通常の労働時間の賃金の計算額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

 そして,この割増賃金を計算するにあたっての基礎となる賃金については,「基本給」と名目で支給されるものだけにとどまるものではありません。

 労働基準法第37条第5項は,次のように規定しています。
 第1項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には,家族手当,通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。
 これを受けて,労働基準法施行規則は次のように規定しています。
 法第37条第5項の規定によつて,家族手当及び通勤手当のほか,次に掲げる賃金は,同条第1項及び第4項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。
 一 別居手当
 二  子女教育手当
 三  住宅手当
 四  臨時に支払われた賃金
 五  一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金


 つまり,「基本給」という名目で支給されているものだけでなく,家族手当や通勤手当,住宅手当といった名目以外で支給されている,たとえば「役職手当」,「職務手当」といった名目で支給されているものはすべて,未払残業代を計算するときの「賃金」に含まれてしまうこととなるのです。

 そのため,従業員に対し,基本給名目で月額20万円,役職手当で5万円支給されている一方で残業代が支払われていない場合で,月に250時間労働しているとすると,1か月の法定労働時間は174時間として計算されることが多いので,
 割増賃金の基礎となる賃金は,
    25万(円/月)÷174(時間)=1437円となり,
 未払残業代は,1月で,
    1437(円)×(250(時間)-174(時間))=10万9212円
となります。

 そして,労働基準法第115条は,次のように規定しています。
 この法律の規定による賃金(退職手当を除く。),災害補償その他の請求権は2年間,この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては,時効によつて消滅する。
 そのため,未払残業代として最低2年間分は請求されるリスクがあることから,先の未払残業代2年分とすると,
    10万9212(円)×24(月)=262万1088円
もの高額な未払残業代を支払わなければならないこととなってしまうのです。

 次回以降は,残業代を支払わないで済む方策があるのかについてみていきます。


投稿者 川崎パシフィック法律事務所

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