企業法務通信

2014年12月13日 土曜日

企業における残業代請求への対策3



企業における残業代請求への対策3
 
  残業代を支払わないで済む方策として考えられるもので,明文上の根拠のあるもののうちのA「監督若しくは管理の地位にある者」(管理監督者)等,労働基準法第41条が労働時間等に関する規定の適用除外と定めている場合のうち,「監督若しくは監督の地位にある者」(管理監督者)以外については,あまり該当することがないことは,前回ブログに記載したとおりです。
 
  それでは,「監督若しくは監督の地位にある者」(管理監督者)は,どのような場合に該当するのでしょうか。
 
  前回ブログでも紹介した,労働省労働基準局長・労働相婦人局長が都道府県労働基準局長宛に発した昭和63年3月14日基発第150号婦発第47号「労働基準法関係解釈例規について」には,以下のとおり記載されています。
〈監督又は管理の地位にある者の範囲〉
 法第41条第2号に定める「監督若しくは管理の地位にある者」とは,一般的には,部長,工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり,名称にとらわれず,実態に即して判断すべきものである。具体的な判断にあたっては,下記の考え方によられたい。
(1)原則
      法に規定する労働時間,休憩,休日等の労働条件は,最低基準を定
  めたものであるから,この規制の枠を超えて労働させる場合には,法
  所定の割増賃金を支払うべきことは,すべての労働者に共通する基
  本原則であり,企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から
  任命する職制上の役付者であれば全てが管理監督者として例外的取
  扱いが認められるものではないこと。
(2)適用除外の趣旨
      これらの職制上の役付者のうち,労働時間,休憩,休日等に関する
  規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない,重要な職務
  と責任を有し,現実の勤務態様も,労働時間等の規制になじまないよ
  うな立場にある者に限って管理監督者として法41条による適用の除
  外が認められる趣旨であること。従って,その範囲はその限りに,限定
  しなければならないものであること。
(3)実態に基づく判断
      一般に,企業においては,職務の内容と権限等に応じた地位(以下
  「職位」という。)と経験,能力等に基づく格付(以下「資格」という。)と
  によって人事管理が行われている場合があるが,管理監督者の範囲
  を決めるにあたっては,かかる資格及び職位の名称にとらわれること
  なく,職務内容,責任と権限,勤務態様に着目する必要があること。
(4)待遇に対する留意
      管理監督者であるかの判定にあたっては,上記のほか,賃金等の
  待遇面についても無視しえないものであること。この場合,定期給与
  である基本給,役付手当等において,その地位にふさわしい待遇が
  なされているか否か,ボーナス等の一時金の支給率,その算定基礎
  賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じ
  られているか否か等について留意する必要があること。なお,一般
  労働者に比べ優遇措置が講じられているからといって,実態のない
  役付者が管理監督者に含まれるものではないこと。
(5)スタッフ職の取扱い
      法制定当時には,あまり見られなかったいわゆるスタッフ職が,本
 社の企画,調査等の部門に多く配置されており,これらスタッフの企
 業内における処遇の程度によっては,管理監督者と同様に取扱い,
 法の規制外においても,これらの者の地位からして特に労働者の保
 護に欠けるおそれがないと考えられ,かつ,法が監督者のほかに,
 管理者も含めていることに着目して,一定の範囲の者については,
 同法41条第2号外該当者に含めて取り扱うことが妥当であると考え
 られること。
  
〔昭和22・9・13発基第17号,昭和63・3・14基発第150号〕

  「監督若しくは監督の地位にある者」(管理監督者)に該当するか否かが問題となった裁判例をみてみると,リーディングケースとなった静岡銀行割増賃金等請求事件における静岡地裁昭和53年 3月28日判決(労民 29巻3号273頁)は,次のように判示しています。
  労基法は労働時間・休憩・休日に関する労働条件の最低基準を規定しているが(同法第32条ないし第39条参照),このような規制の枠を超えて活動することが要請されている職務と責任を有する「管理監督の地位にある者」については,企業経営上の必要との調整を図るために,労働時間・休憩・休日に関する労基法の規定の適用が除外されるのであり(同法第41条第2号),このような同法の立法趣旨に鑑みれば,同法第41条第2号の管理監督者とは,経営方針の決定に参画し或いは労務管理上の指揮権限を有する等,その実態からみて経営者と一体的な立場にあり,出勤退勤について厳格な規制を受けず,自己の勤務時間について自由裁量権を有する者と解するのが相当である。

  「監督若しくは監督の地位にある者」(管理監督者)に該当するか否かが問題となった裁判例は多数あります(なかには,ファストフード店の店長が管理監督者にあたらないとして残業代請求が認められた日本マクドナルド事件のように話題になったものもあります。)。
  それらの裁判例からすれば,概ね,以下の①~③の要件をすべて充たさないと,「監督若しくは監督の地位にある者」(管理監督者)とは認められないといえそうです。
  ① 経営方針の決定に参画したり労務管理上の指揮権限を有する
  など,その実態からみて経営者と一体的な立場にあること
  ② 出勤退勤について厳格な規制を受けず,自己の勤務時間につ
  いて自由裁量権を有すること
  ③ 管理監督者という地位にふさわしい収入があること
 
  上記①~③の要件をすべて充たすというのはなかなか困難で,公刊された裁判例では,「監督若しくは監督の地位にある者」(管理監督者)にあたるとは認められなかった例が,認められた例よりもはるかに多くなっています。
  そして,およそ「監督若しくは監督の地位にある者」(管理監督者)にあると認められそうにないケースでは,会社側は,「監督若しくは監督の地位にある者」(管理監督者)にあたらないことを前提に和解に応じる例が多いでしょうし,近時では労働審判で和解する例も多いでしょうから,現実には,ほとんど「監督若しくは監督の地位にある者」(管理監督者)にあたらないといってよいと思われます。


投稿者 川崎パシフィック法律事務所

カレンダー

2014年12月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

月別アーカイブ