企業法務通信

2014年12月15日 月曜日

企業における残業代請求への対策4



企業における残業代請求への対策4
 
  残業代を支払わないで済む方策として考えられるもので,明文上の根拠のあるもののうちのA「『監督若しくは管理の地位にある者』(管理監督者)等,労働基準法第41条が労働時間等に関する規定の適用除外と定めている場合」というのはあまり該当することがないことについては,前回及び前々回ブログに記載したとおりです。
 
  では,B「みなし労働時間制が採用されている場合」はどうでしょうか。
 
  労働基準法第32条第1項本文は,次のように規定しています。
  労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において,労働時間を算定し難いときは,所定労働時間労働したものとみなす。
  このように,明文のあるみなし労働時間制は,事業場外みなし労働の場面に限定されています。
  東京労働局・労働基準監督署パンフレット「『事業場外労働に関するみなし労働時間制』の適正な運用のために」には,以下の記載があります。
  労働基準法第38条の2による事業場外労働のみなし労働時間制とは,労働者が業務の全部又は一部を事業場外で従事し,使用者の指揮監督が及ばないために,当該業務に係る労働時間の算定が困難な場合に,使用者のその労働時間に係る算定義務を免除し,その事業場外労働については「特定の時間」を労働したとみなすことのできる制度です。

  前回及び前々回ブログでも紹介した,労働省労働基準局長・労働相婦人局長が都道府県労働基準局長宛に発した昭和63年3月14日基発第150号婦発第47号「労働基準法関係解釈例規について」には,以下のとおり記載されています。
〈事業場外労働の範囲〉
  事業場外労働のみなし労働時間制の対象となるのは,事業場外で業務に従事し,かつ,使用者の具体的な指揮監督が及ばず,労働時間の算定が困難な業務であること。したがって,次のように事業場外で業務に従事する場合であっても,使用者の指揮監督が及んでいる場合については,労働時間の算定が可能であるので,みなし労働時間制の適用はないものであること。
  ① 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で,そのメン
  バーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
  ② 事業場外で業務に従事するが,無線やポケットベル等によって随時
  使用者の指示を受けながら労働している場合
  ③ 事業場において,訪問先,帰社時刻等当日の業務の具体的指示を
  受けたのち,事業場外で指示どおりに業務に従事し,その後事業場に
  もどる場合
 
〔昭和63・1・1基発第1号〕

  労働者が自宅で情報通信機器を用いて行う勤務形態での在宅勤務については,以下の厚生労働省労働基準局長「情報通信機器を活用した在宅勤務に関する労働基準法第38条の2の適用について」(基発第0305001号・平成16年3月5日/改正 基発第0728002号・平成20年7月28日)が参考になります。

  【問】
  今般,在宅勤務に関し,下記のとおり労働基準法第38条の2の適用に係る疑義が生じましたので,御教示願います。
  次に掲げるいずれの要件をも満たす形態で行われる在宅勤務(労働者が自宅で情報通信機器を用いて行う勤務形態をいう。)については,原則として,労働基準法第38条の2に規定する事業場外労働に関するみなし労働時間制が適用されるものと解してよろしいか。
[1] 当該業務が,起居寝食等私生活を営む自宅で行われること。
[2] 当該情報通信機器が,使用者の指示により常時通信可能な状態に
  おくこととされていないこと。
[3] 当該業務が,随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていな
  いこと。


  【答】
  貴見のとおり。
  なお,この場合において,「情報通信機器」とは,一般的にはパソコンが該当すると考えられるが,労働者の個人所有による携帯電話端末等が該当する場合もあるものであり,業務の実態に応じて判断されるものであること。
  「使用者の指示により常時」とは,労働者が自分の意思で通信可能な状態を切断することが使用者から認められていない状態の意味であること。
  「通信可能な状態」とは,使用者が労働者に対して情報通信機器を用いて電子メール,電子掲示板等により随時具体的指示を行うことが可能であり,かつ,使用者から具体的指示があった場合に労働者がそれに即応しなければならない状態(即ち,具体的な指示に備えて手待ち状態で待機しているか,又は待機しつつ実作業を行っている状態)の意味であり,これ以外の状態,例えば,単に回線が接続されているだけで労働者が情報通信機器から離れることが自由である場合等は「通信可能な状態」に当たらないものであること。
  「具体的な指示に基づいて行われる」には,例えば,当該業務の目的,目標,期限等の基本的事項を指示することや,これらの基本的事項について所要の変更の指示をすることは含まれないものであること。
  また,自宅内に仕事を専用とする個室を設けているか否かにかかわらず,みなし労働時間制の適用要件に該当すれば,当該制度が適用されるものである。


  このようにみてみると,事業場が意味なし労働時間制を採用することができるケースというのはかなり限られたものということができるでしょう。


投稿者 川崎パシフィック法律事務所

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